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モノづくりの工場現場
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伝統工芸の職場
「人間は道具をつくる動物である」と言われます。そして、その道具を使って新たな道具を造っていくことで豊かな社会をつくってきました。こうした行為は、人間の根源的なものであり「人類」が先祖から受け継いできた営みであるようです。
日本の「モノづくり」は世界でも高い評価を受けている分野のひとつです。1853年に浦賀にやってきたペリー提督は「日本の手工業者は世界におけるいかなる手工業者にも劣らず練達であって、人民の発明力をもっと自由に発達させるならば日本人は最も成功している工業国民に何時までも劣っていないことだろう」と『ペリル提督日本遠征記』で述べています。ペリー提督自身、アメリ海軍の造船所長を務めたこともあり、日本の「モノづくり」の力を高く評価したのでしょう。
日本の「モノづくり」は、技の器用さ、几帳面さ、妥協を許さない完全主義など複合的なものです。単に手先の器用さなどだけではない、知識や経験などの要素と併せて仕事に対する態度によって養われているものです。
『下町ロケット』(小学館文庫)は、池井戸潤さんの大ベストセラーですが、中小企業の「佃製作所」が、ロケットエンジンのバブルシステムの開発にかける奮闘の物語で、テレビドラマも人気になりました。「下町ロケット」では、日本のモノづくりを担ってきたのは、中小零細の町工場だという主旨をふまえています。
では、日本の製造業の状況はどうなっているのかといえば、雇用者の動向から見ると、2002年の1,202万人から2019年の1,063万人へと20年間で11.6%減少しています。また、若年就業者数でも減少が続いているという状況です。産業構造の変化によって、第三次産業が進展し、製造業さえもサービス事業化へと進んでいるようです。
「モノづくり」という言葉の分析によれば、「生活が豊か」「人が物を作る」「心を込める」「機械で生産する」「日本の工業製品」「伝統工芸」「職人の技術」「新たらしいものを作り出す」という8つの文脈に関連して使われる傾向にあると分析されています。
「モノづくり」は、人の営みなかにあります。縄文遺跡からは、蔓を編んで漆で補強されたポシェットが出土しています。モノをつくる技術の伝承は容易ではありません。社会的な仕組みをつくって行かなければ技能は途絶えてしまうでしょう。
伊勢神宮では、「式年遷宮」という祭りがあります。20年に一度、社殿を造営し、大御神の衣服及びそれに関係する服飾品などと殿内に奉安する紡績具、武具、馬具、楽器、文具、日常用具などを調整します。これによって多様な技能が次の世代に受け継がれていきます。
やはり、「モノづくり」にとって大切なことは、技術と経験の積み重ねではないでしょうか。教科書があるだけでは「モノづくり」はできません。体験を重ね、練習を重ねてその技能や技術のノウハウを蓄積することによって、はじめて「モノづくり」が成り立ちます。「モノづくり」も時代の変化を受けて変わっていきます。AIの発達により、これまでの人間の技による技術が置き換えられることも多くなります。でも、「モノづくり」の精神はAIに置き換えることはできないのです。
うむっさん


