子どもの貧困Ⅱ~その具体策は~



 6月9日「骨太の方針」が閣議決定された。「世代を超えた貧困の連鎖をなくすための取組を進め、格差が固定化されず、社会的流動性のある環境を整備する」とされている。しかしながら、その実効性を担保する「財源措置」については棚上げになってしまったようだ。財源論の中心には「こども保険」がなるようだが簡単にはまとまっていかないのだろう。

 財源論は措くとして、子どもの貧困対策の議論はどう進んでいるのか。平成27年12月に示された、子どもの貧困対策会議決定「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」では、いくつかの柱を立てて、その実現を図ることが検討されている。そのうち、①「学校」をプラットフォームとした施策、②学びを応援する施策について考えてみたい。

 また、子どもの貧困対策の全般にわたって、具体の施策を担う基礎的な自治体である「市」の施策についても、「ひとり親家庭の自立」支援を進める喫緊の事業として、子育てや教育そして生活に関することから就業についても、ワンストップで相談ができ、支援するような体制の整備も進めていく必要がある。


 はじめに、「学校」をプラットフォームとした施策では、「スクールソーシャルワーカーを、5年後に約1万人拡充することにより、教育と福祉・就労との連携を組織的に行い」ということが対策として提案されている。しかし、1万人拡充したスクールソーシャルワーカーだけで対応することができるのだろうか。文部科学統計要覧(平成28年)では、全国で小学校20,601校、中学校10,484校という統計になっている。小・中学校だけでも3万余りの学校があるなかで人的対応は充分なのだろうか。

 現状で「学校」をプラットフォームとしていくだけの人的対応がなされるのであればいいが。文部科学省が公表した2016年勤務実態調査によれば、小学校教諭の34%、 中学校教諭の58%が週60時間以上の超過勤務を行っており、1カ月の超過勤務は単純計算で80時間以上となる。これは、厚生労働省が定める労災認定の目安となる「過労死ライン」を超えるものだ。学校教諭の「頑張り」だけでは立ち行かなくなっているのが現状ではないのか。

 そうした状況を踏まえて、学びを応援する施策を進めていくためには、学校の持つ資源以外の社会的な資源を投入する必要があるのではないか。現状で、学校や学校設置者である地方自治体等が、子どもの貧困対策としての学びの場を充分に提供することができていないとすれば。公的な支援が遅々として進まないのであるならば。共助としての「地域の力」を集めて、一人一人の子どもの未来を輝くものにすることができるような方策を創り上げていく必要があるのではないか。

 もとより、子どもの貧困対策は、子どもたちの学びの機会を確保するだけではなく、経済的・社会福祉的な施策などが総合的に施されることが必要になる。少子化対策を喫緊の施策とするだけでなく、現在の子どもたちの誰もが、幸せだと思える社会への対応を早急に進めていかなければならない。 
             
かまらさん