平成24年1月のコラム

2012年は復興への明るい希望が持てる年となるのか?



龍 謹んで新春のお慶びを申し上げます

読者の皆さんもご家族お揃いで良き新年をお迎えになられた事と存じます。

今年のお正月ほど、家族の絆や人々との繋がりの大切さを感じられたことは無かったのではないでしょうか。

 旧年に起きた東日本大震災や巨大津波に加え、原発の安全神話がもろくも崩れ福島原発事故による放射能汚染の広がりは想定を超えて、各地に大きな被害をもたらしています。昨年の政府発表による原子炉の冷温終息宣言も、今後原子炉の廃炉までには40年以上の年月を想定し、まだメルトダウンした核燃料棒の被害状況も把握されていません。原発事故により住みなれた故郷を強制的に退去し、仮設住宅に移住しなければならなくなった住民の無念はいかばかりかと思います。赤ん坊や小さな子どもの健康を考えれば、福島第一原子力発電所周辺に住んでいた半径30Km〜50Km圏内の住民も、ロシアのチェルヌブイ原発汚染地区と同様に何十年も居住する事は出来ないのではないかと思います。

 日本政府は放射能汚染地域を、新たに3区分を設けて、放射能で汚染された地域を除染することにより、避難されている住民の方たちが少しでも元の居住区域に戻れるように、今年2月に発足する復興庁と各自治体を中心に汚染土壌の除染活動に取り組みを始めことが決まっています。

@避難指示解除準備区域=年間被ばく線量20ミリシーベルト以下
A居住制限区域=年間20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下
B帰還困難区域=現時点で年間50ミリシーベルト超

 年間被曝線量20ミリシーベルト以下とされる非難指示解除準備区域といえども、赤ちゃんや小さなお子さんをお持ちの家庭では、将来にわたり放射線の被曝を受け続ける家族の健康を考えれば、ずっとその地域に居住する危険は避けたいと思うのが人の感情であります。

 昨年の暮れ近く、新聞の記事でT社が移動できる放射能汚染水処理システム「SARRY-Aqua」を開発し、低濃度の汚染水をポンプで汲み上げ、吸着材が入った容器の中で汚染水から放射性セシウムを除去、処理能力は、汚染水1トン(1m3)を1時間で処理することができ、処理した水の放射性セシウムの濃度は、10ベクレル/キログラム以下にすることができると発表している。その他にも各社から海水の淡水化プラントを応用した放射能汚染除去方など新しい放射能汚染除去方法の技術開発が進んでいます。

 政府の復旧・復興整備予算も5年間で19兆円も投入される復興予算が国会を通過して、今年から実行される。東日本大震災直後の政府対応は全く目を覆いたくなる程、ひどいものであったが国の非常時に被災国民を放置して与野党間で政争を繰り返した愚を決して国民は許さないだろう。次の衆議院選挙時に国民がどのような裁断を下すのか国会議員諸氏は心しておく必要があろう。

 昨年の世界の政治や経済についても、21世紀も10年以上が過ぎてこれからの世界の潮流が変わったことを窺わせる大きな出来事が続いた。中近東の3国(チュニジア、エジプト、リビア)の独裁者が民衆により追放され、アラブの春と呼ばれる長く弾圧され続けた国民の民主化運動が次々と周辺国にも飛び火して次はシリア、イエーメンなどの独裁者の交代を求めている。また昨年12月17日北朝鮮総書記の金正日(キムジョンイル)死去を発表、後継者の息子で金正恩(キムジョンウン)が国の最高権力者として三代目を踏襲する。金正日の葬儀も終わって新年から独裁国家を踏襲するがこの先どうなるのか世界も金正恩氏の動向を注目している。また、世界の主要大国(中国)の国家元首が代わり、ロシアも大統領選挙が行われ、アメリカも11月には大統領選挙が行われる。大国のリーダーが変われば、世界にも影響がおよぶ。

 与党民主党の野田内閣も100日間のハネムーン期間も過ぎて、消費税率の増税(2015年10%)と社会保障(年金)と税の一体改革案について、激しい与野党内からの反対意見の突き上げにあっている。経済界の求めるTPP加入についても、国内の反対勢力から強硬な突き上げを受けている。こうして見ると野田内閣は八方ふさがりの状況にあるが、発足当時のどじょう内閣と揶揄された泥臭い中にもしぶとく法案成立に向けて粘り腰を示すのではないかと思う。衆議院選挙前に発表されたマニフェストも結果的には民主党は何に一つ実現されておらず公約違反と言われても仕方ないだろう。当初の民主党政権発足時に行われた無駄な事業の見直し「事業仕訳」も、結果的にはそれほど財政を改善するほど巨額な財源を捻出できなかった。
 この様に、実現の見通しが無いマニフェストよりも現実を直視した、政策変更も時として党首に求められる重要な決断材料だ。

 先進国といわれる欧州もリーマンショック以降、加盟国の国債信用不安から、欧州の南北格差は広がるだろう、またアメリカにおいても国民の1%が富を独占し、残りの99%の国民が経済的にも困窮している。特に中間層が近年急激にその就労機会を減らし収入が減少している。世界市場でのグローバル競争を言い訳に、アメリカの多くの製造業や流通業など多くの企業が海外で事業展開を進め、その分国内の労働市場は縮小し、国民所得が減少しており、アメリカ政府が少々の雇用環境改善の施策を打ち出そうが、簡単には問題の解決に繋がらないだろう。結局はアメリカも日本も世界で市場拡大が続く新興国に、働ける国内の労働者が出かけていって稼いでくるしか中間層の雇用改善にはつながらないのではなかろうか?

 単純に言えば、海外へ出かける人々(労働者)は従来の様な製造業の工場関係者やIT技術者など技能者や知識階級の人々だけでなく、日本の文化(料理・食品・介護・福祉・学習塾・美容・流通・観光など)を全面に打ち出して、新興国内で個人や少人数の組織レベルで仕事を作り、現地で働いて収入を得ればよいのである。

 もちろん日本の様に急速に進む少子高齢化社会では、これら市場ニーズに対応できる人々の人材も求められ、少なくとも日本の労働人口の2/3以上は国内労働市場で吸収できる。残りの1/3ほどの若者や働き盛りの人達は海外に出かけて就労の機会を探せばよいのではないだろうか。よく日本の若者は海外に出たがらないとか海外への留学生が減ったとか言われるが、これからは世界市場を意識した就労先を探すことが必要となってこよう。その意味でも日本語以外の外国語の習得も必須であり英語以外他にも周辺国の言語習得も就職活動に有利に働く。

 お隣の韓国や中国では英語以外に1〜2ヶ国語をマスターしている人材も多くいると聞く。21世紀は国の境が低くなり、国境を越えた人々の自由な行き来が活発となって、チャンスを求めて海外に武者修行に出かける心構えがこれからの日本の若者にも求められるのではなかろうか。

 昨年は日本も世界も大きな変動期を迎えた。今地球の人口は70億人を超えて人口は確実に増えている。人類がこの先「豊で平和な世界」を後世の人々に残すためのも、今人類が解決しなければならない多くの課題を抱えている。地球温暖化防止の問題や自然災害や原子力発電事故による放射能汚染拡散に対して国際社会が協力して世界的な防災・防御体制を各国の利害を越えて早く築く必要がある。また、国際的な経済不安や独裁国家や政治不安に対しても、国際的な場でこれらの暴走を監視し社会の混乱を防ぐ世界的な仕組みを作ることが求められている。その意味で日本は地球環境にやさしい省エネ技術や環境対策技術では世界をリードする技術力を有しており、世界と人類のためにもっと貢献できるのではないか。

 そのためにも政権与党は国民の信頼を得る政策を着実に実行し、少なくとも任期4年間の責任を全うできるようなしっかりとした政権を樹立する事が求められる。その上で日本政府が外交政策面でも世界に貢献できる政策を提言すれば、これに賛同する国の協力も得て難しい課題も解決できるのではないかと思いたい。昨年起きた多くの困難な出来事は、直ぐには解決しないかも知れないが、人類の英知と問題解決を図る不断の努力によって、明日に希望が持てる世界に変わっていくことを信じたい。

 平成23年度のNPO活動も昨年12月までにほぼ主要な行事は終えて、3月に実施予定の社会見学バスツアーを残すのみとなりました。期間中に開催した各種の行事に会員や一般市民の方にも多く参加いただき、市民との交流の場も増えてまいりました。今年も当NPO法人の活動について、地元の「まちの活性化」「まちづくり」に務めてまいります。本年もどうぞ変わらぬ皆様のご支援ご協力をお願い申し上げます。

                平成24年1月元旦

                特定非営利活動法人 かまがや地域情報の窓
         
                          理事長 川俣 蓁

 今までのコラム履歴はこちらをクリック!