「鎌ケ谷放課後クラブ きらら」を訪ねて


 市内で障害者の子どもたちのために、学校が終った後に同じ障害を持つ仲間の子どもたちと遊びを通じて日常生活訓練を学ぶ、障害者支援活動をされている「特定非営利活動法人 きらら」を11月10日(土)午後に訪問して、松村幸江理事長さんからその活動状況をお伺いする機会があったので、読者の皆さんにご紹介したいと思います。


 最初に「きらら」の活動目的と活動内容及び設立の生い立ちについて

@ 障害を持った子どもたちは、放課後や夏休みに、家族以外(例えば友達など)と遊ぶことは極端に少ないのが現状であり、「きらら」の活動目的として学校の放課後や長期休業中をのびのびと安全に楽しく生活する場が得られることを目的としている。

A 遊ぶ場が必要なのが第一、最初は中央児童センターの一室を借りていた。自分達で独立した施設が欲しいということで、市から職員住宅の一部を借りて施設を運営することとなった。

B 「きらら」の活動内容
【放課後クラブの運営】
学校放課後デイサービス
 ・・活動日:毎週月〜金曜日 午後3:00〜5:00 土曜日は不定期

子どもたちの作品


 ・・障害のある子どもたち学校が終った後、2時間ほどこの施設で仲間との遊びを通じて、日常生活に適合できる(集団生活適応)訓練をしている。

皆と一緒に遊ぶ 自分のペースで遊ぶ 指導員のお姉さんと 集団生活にも慣れる


学校長期休業中ショートステイ
 ・・*長期休業中(学校の夏休み中など)は日程が変更される

土曜日デイサービス
 ・・「お出かけ土曜企画」は月2回開催、一日7人を定員に決めて指導員とボランティアの方々の応援を得て、子どもたちと市内や郊外に出かけ日常生活をする上で必要な社会生活のルールなどを学ぶ(日常生活訓練)体験をさせている。

【小規模福祉作業所の運営】
・小規模福祉作業所「おんりい1」

作業所「おんりい1」 野菜農園 市役所に近い作業所 草花の手入れをする指導員


 ・・平日午前9時から午後5時まで。高校部を卒業した障害を持つ子どもが就職しないで家庭にいる場合、こちらの作業所で活動の場を提供し、農作業を通じて目的意識をもって働けるようにしている。近くの貸し農園で、野菜づくりの作業を行い、そこで収穫された無農薬野菜の販売(さつまいも、サトイモ、春菊、ちんげん菜、ダイコン、トマト、ジャガイモ、ねぎ等)もしている。
また、作業の出来ない雨の日などは紙すき、ビーズ細工などを行っている。収入はごく僅かだが、目的意識をもって作業をさせている。

 作業所の中で良く仕事ができる子は、社会に出て働いている。障害児の就職事例としては、ユニクロ(1店舗1名)、マクドナルド、ライターの製造会社、和菓子屋さん、クリーニング屋さん、ホテルのルームサービス補助などの仕事につかれている方もいる。

【広報活動、広報紙の発行】
・「きらら」の障害者自立支援活動の告知と、ボランティアなど支援者の募集

(平成17年)10月15日発行(No.929号)の「広報 かまがや」に知的障がい者小規模作業所「おんりぃ1」利用者募集広告を掲載しました。

 NPO法人きららが運営している小規模作業所「おんりぃ1」の利用者を募集します。
作業所は中央区二丁目。作業内容は、農作業を中心に紙すきなど。
詳しくは、松村幸江 電話:443-3799 または 電話:090-7246-3823 へ 

 「きらら」の活動組織と参加している子どもたち

@ 「NPO法人 きらら」の会員総数は108名(内 正会員28名、賛助会員80名)、役員5名、事務局:経理担当スタッフ2名の組織構成となっている。設立は平成14年6月14日
「放課後クラブ きらら」の運営担当者は指導員の方が3名、パートの方が3名で構成している。「土曜日デイサービス」など実施する日には、他にボランティア4〜5名ほどの応援を願って1対1で子どもたちのケアーが出来るようにしている。

A 現在「きらら」に登録している子どもたちは24名で、内男子21名、女子3名の構成となっている。参加している子ども達の年齢は小学部1年生から高校部3年生まで(6歳から18歳まで)の子どもたちを対象としている。



理事長の松村幸江さんに「きらら」の活動や将来展望、現在の活動でお困りになっている事などお伺いしました。

松村幸江理事長

@ どんな活動をしているのですか?
学校放課後デイサービス:
 学校が終って、放課後クラブに子ども達が集まり午後3時から施設や近くの公園で遊んだり、4時半頃におやつを食べたりして、5時頃にはお家に帰ります。子どもたちがこの施設ですることは、主に遊びですが、児童デイサービスは集団生活適応訓練と日常動作(日常生活訓練)を取り入れしなければならないので、そういう活動をしながら遊ばせているのです。

 集団で遊んだり、普段の日常生活動作でもあるトイレの排泄、着脱(衣服の脱ぎ着)などを行います。そのような事を遊びの中に取り入れて、集団で皆でいられる訓練をします。多動の子など他人のこと等に関心を持てない子どもいますが、お友達を意識しないと社会に出たときに適応する事ができません。
 児童デイサービスの部屋で遊ぶ子どもたちの行動を見ていると、子ども同士互いに言葉をほとんど交わしていませんが、それでもお互いの事が気になっています。自閉症の子どもはコミュニケーション関係が凄く弱いので、自分の世界に入り込みやすいのです。ここに来た時は少しでもお友達を意識したり、大人を意識したりしてだんだんと(コミュニケーションが)良くなってきます。
 障害児といえども世の中のルールや社会生活のルールを守らなければならないので、ここに来ることによって少しでも人との接し方や日常生活のルールなどを学んで欲しいと思います。そのような事を学ぶことがお母さん方の願いでもあるので、世の中で駄目と言われている事はやってはいけないと教えています。そのような事を子どもたちが知らないと、社会に出た時に許してもらえません。
 (日常生活をしていく上で必要な事)散歩しながらでも右側を歩いていって信号を見るのだよとか、人に勝手によりかかってはいけないとか、こう言う場面では大声を出してはいけないよ等と教え、常々訓練する必要があるです。
 この施設には自閉症、ダウン症、その他いろいろな障害を持つ子ども、癲癇の子どもたち等、一概に知的障害といっても色んな障害があります。自閉症でなくても人とのコミュニケーションがうまく出来ない子どもたちもいるのです。一緒に仲間と遊ぶことによってだんだんと良くなってきます。子どもたちが「土曜日企画」などに参加すると、社会のルールを守らなければならないので、マナーなども良くなってきます。
 ここに来ると子ども達を安心して預けられると、お母さん方が喜んでくれます。「きらら」では子どもたちの安全確保に努めているので今まで大きな事故が起きていません。

A お母さん方から「きらら」に期待されていることは?
 将来子どもたちの自立準備のための障害児自立支援活動。お互いの自立の為に、親は将来誰かに子どもを託さなければなりません。そのため親の自立と子どもの自立の準備が必要とされています。子どもが20歳くらいになると、どんな障害があっても仲間で生活したいと願っているので自立させる方が良いと思います。できれば障害を持つ仲間と暮らしたり、世話人さんのお世話で自立できれば幸せだと思います。「きらら」が障害児の自立支援活動を通じて、子どもたちが社会に適合し、自立できるような訓練をこの施設に通っている間に習得できるようにして欲しいとお母さん方から期待されています。
成年後見人制度もあって、障害者が親からの財産相続をするような場合、判断能力が欠ける場合、本人または家族が後見人の申し立てをする事により、家庭裁判所が審判によって後見人が選任され、本人を援助し、身の回りに配慮しながら財産を管理する制度があります。)

B 「きらら」の将来展望について
 20歳くらいになれば仲間で住みたいという希望をもっている子どもたちに、障害児が将来自立に向けての準備が出来ようにしてあげたい。放課後クラブを卒業された子どもたちが、あとは(小規模福祉)作業所に入って、日中は作業所で働いて、夜は生活ホーム又はグループホームで生活し、仲間と暮らしていって欲しいと願っています。市内にはグループホームとして障害児を受け入れてくれる「青空の会」もあります。

C 「きらら」の障害児自立支援活動で困っている事は?
・障害児を持つ保護者から、受け入れの要望が多いが、現在の職員住宅では広さが不足して部屋数が足りません。(現在は遊戯室が1室と事務所が1室のみです)

・法律改正で障害者自立支援法が適用されると、重度障害者の1割負担になって、保護者の負担が増えて子供たちが訓練所にも通えなくなる恐れがあります。

・小規模福祉作業所の所員さんを募集していますが、なかなか集まりません。市広報紙10月15日(No.929号)に掲載して利用者(福祉作業所にくる障害者の方)を募集している告知をしました。所員さんの募集定員は5名ですが,現在働いている所員は1名だけです。
 障害者をお持ちのご家庭で、家庭に閉じこもりがちなお子さんがおられたら、作業所で働くことによって、子どもさんの自立への訓練を促進するためにも、一人でも多く参加して欲しいと思います。

・施設の移転先が見付かりません。市側で老朽化に伴なう職員住宅を壊すまでは、なるべく長くここにおいて欲しいと願っています。将来ここを引き払っても、「きらら」活動を継続するためには活動の拠点を新たに探さなければなりませんが、一般水準の高いお家賃では、指導員や事務局の人件費を支払えば、市・県などから補助を受けていても運営が厳しくなります。
 さらに、施設が新しく確保されても、障害を持つ子どもたちが通ってくるためには、どうしても車で送り迎えを必要とするため、施設に隣接した駐車場が必要となります。現在でもこのような条件を満たした、物件を探すのは大変難しく、障害者自立支援及び当NPO法人の活動に関心のある支援者のご協力を求めています。
 
・ボランティアの募集をしてもなかなか人が集まらないので、ボランティアの数は常に不足しています。学生または主婦の方でも時間があればどうか手伝って欲しいと思います。ケアーの難しい子どもは指導員が対応しますので、経験の無いボランティアの方でも子どもの世話も可能です。「きらら」の放課後クラブに通っている対象地区は(養護学校が松戸にあるため)松戸市及び鎌ケ谷市内にお住まいの方です。

・いまでも障害児を持つ親御さんから子どもを預かって欲しいという希望は強いのですが、「きらら」にも受け入れのキャパシティがあるので、これ以上受け入れられないのが現状です。特に夏休みなど長期の休みの間、中学生や高校生などを持つ親御さんは一日中、子どもたちの世話をしているとストレスがたまり、少しの時間でも預かって欲しいという切実な問合せはかなりあります。このような要望を受けて市の方に、職員住宅の部屋の利用を増やさせて欲しいと要望していますが、建物の老朽化もあって行政側の返事は余り芳しく無く、障害児を抱えるご家族の要望に応える事が出来ずに困っています。

D 市民の方にお願いしたい事
 障害を持つ子どもたちの福祉に関心のある方のボランティアを募集しています。どうか世の中には障害を持つこのような子どもたちがいる事を知って頂きたい思います。また市民の皆さんの理解とボランティアの方々による、少しの手助けで地域の中でも障害を持った子どもたちが住んでいけるのだという事を知って頂きたいと思います。

【施設訪問の感想】

 障害児の自立支援活動をされている、「特定非営利活動法人 きらら」さんの施設を初めて訪問し、そこで遊ぶ子どもたちと触れ合い、また松村理事長さんから「きらら」活動の課題などをお伺いして、一市民として何ができるか考えてみました。
 正直言って、このような障害を持つ子どもたちに直接話しかけたり、触れ合ったりする機会は初めての事であり、最初どのように子どもたちと接すればいいのか戸惑いもありました。

 しかし、子どもたちの遊びの輪の中に入ってみると、自然と子どもたちとのコミュニケーションができるのですね。最初はただじっと子どもたちが何をして遊ぶのか見ていましたが、子供たちは各自勝手に自分でおもちゃなどを取り出して、室内で遊んでいます。子どもたち相互の会話はほとんど有りません。しかし遊びの中で他の子どもと争う事もほとんどありませんでした。子どもたちは絵本を見たり、ボール遊びをしたり、パズルゲームに興じたり、楽器を鳴らしたり、機関車のおもちゃで遊んだりと各自、好きなように遊んでいます。
 指導員の方も室内に3名おられて、子どもたちの遊び相手になって、時折り子どもたちが道具で怪我をしないか注意を払います。また子どもたちのトイレタイムをどのように感じておられるのか分かりませんが、実にタイミング良く子どもをトイレに向かわせます。

 部屋の隅で子どもたちの遊びを見るために、小1時間ほど私があぐらをかいて座っていると、一人の子どもが近寄ってきて何の警戒も無く、見知らぬ私の膝の上にちょこんと座ってくるではありませんか。しばらく自分の孫を膝に乗せているような感じで、その子どもと遊ぶ体験をしました。このように自然に、障害を持つ子どもたちと触れ合えば良いのかなと学びました。
 この施設に来ている子どもたちは学校が終ってから午後の2時間余り、同じ境遇の子供たちが集い、遊びを通じて仲間を意識して、少しずつ日常生活の適合訓練をしているわけですが、中には感情の起伏の激しい子どもや、自閉症の子ども、知的障害のある子どもたちが一緒に時間を過ごすわけですから、事故が起こらないようにひと時も目を離せないので、指導員の方やパートの方も子どもたちのケアーが大変だと思いました。

 また、松村理事長さんから伺った話の中で、障害児を持った親御さんも将来、親が亡くなる時期を迎え、子どもたちと別れなくてはならない時が来た場合に、一番の心残りは子どもたちが自立できているかどうかだとおっしゃっていました。
 このように子どもの自立を助ける福祉施設や、日常生活訓練施設、指導員の育成やボランティアの参加がし易い環境づくり、成人してから日常生活を普通にこなせる、後見人制度の充実などがこれから一層求められると感じました。個人では対処できないこれらの課題を解決するために、福祉活動をしている団体やNPO法人への経済的支援、人材育成、施設運営の支援など、行政(市・県・国)と連携して、相互の役割分担を明確にして、効率よく進めて行かなければならないと感じました。

 一個人として、自分ができることは何かと考えると、現在当NPO法人「かまがや地域情報の窓」で、市内の障害児の自立支援施設の活動状況とその抱える問題点をホームページで告知して、広く一般市民の皆さんに現状を知ってもらって、障害を持つ子どもたちへの理解と自立支援を促進する活動に、企業・法人・団体はもとより、一人でも多くの支援者が増えてくれるようにPRする事だと考えました。

(レポート: S.K)