新たな出会い・研鑚・社会貢献の場を求めて


      一瞬に巡る世界同時不況

 
 いよいよ11月を迎える頃となった。清々しい天候の訪れではあるが、冷え込みも日々に厳しさを増してきた。まさに、秋冷の候とはよく言ったものである。10月も20日を過ぎたある日のこと、久しぶりに東京へと出かけた。ラッシュアワーは既に過ぎていたが、車内はそこそこに込み合っている。午前中のことであった。
 少しばかり余裕をもって家をでたので、船橋駅近くの大手電気店に寄ってみた。日頃気にしていた目指す商品があるかどうか、そしてその性能の確認のためでもある。

 その店は駅ビルに隣接したショッピングビル内にあり、立地条件は申し分ない。開店したばかりの頃は、大勢の客が見られたのに、久方ぶりの店内にはまばらなお客しか見受けられない。店員もかなり減少した感じがする。もちろん、大勢いた店内警備員は姿を消してしまって、殆ど見かけない。
 近くにきた客の姿などには目もくれず、一心に目の前の仕事に没頭する女性店員に、恐る恐るひと言問いかけてみた。

 「○○は何処に置いてありますか」→「うちには、ありません」
「おたくと同様の大型店にはあったようですが...」→「うちの店名は変わりませんが、会社は△△ですから、その言われたとおりの品物しか置けないのです」とのことである。どうやら、お客の欲する品物を置こうとする気持ちなどは、さらさらにない様子である。

 どうみても、以前と比べて応対が極端に悪い気がする。その店が九州を本拠地とする大手家電店に吸収合併されたことは、既知の事実としては分かっていた。しかしこの有様では、いずれ店そのものも、このビルから淘汰されるのも近そうだ、と早々に退散した。

         

 似たような事例を当日、東京駅構内の食事店でも体験した。さすが日本の表玄関である。東京駅の内部は、まるで迷路のように大幅に改築されており、さらに、まだまだ工事中で更なる変貌を遂げつつある。やっと目指す店をみつけて、吉祥寺からきた仲間と入ろうと思ったら「まだダメ」と言う。とにかく入れてくれない。開店時間の5分前のことである。ちょうど1年ほど前に来た店だ。仕方なく5分ほど待って、やっと店の中に入った。
 客は我々以外には一人もいない。仲間は打合せに都合良しと、ノートパソコンを持参した。食事の前に、仕事だけは済ませねばならない。1年前には差し込み口から電源をとって、パソコンを使用させてもらった。そのためにも、同じ店にきた大きな理由がある。このたびは、その使用も断られてしまった。理由は、はっきりしない。とにかく「ダメなのです」の一点張りである。

 これでは、いずれ馴染みのお客も減るに違いない。おっちゃんには関係ないが、営業畑も歩いたわが身には淋しい思いが募る。

 おっちゃん一人だけならば、そんな店はさっさと出てしまうところだが、相手もいることゆえ我慢した。おまけに、打合せ中に何度も注文を取りにくる。仕事が終われば、ゆっくりとビールでも飲んで、お金も店にたくさん落ちるのに、人の気持ちをまったく理解できない店員にはうんざりした。
 こんなときの食事は上手くない。早々に引き上げると仲間とも分かれて、その昔よく歩いたことのある秋葉原から御徒町へと向った。
           

         

             
ビルの谷間に埋没する東京駅
      
          

        
     アキバが生んだ ?? 麻生総理大臣



 東京駅の北口なども高層ビルが林立し、歴史ある赤レンガの駅舎も、すっかり目立たなくなっていた。時間の経過と共に、ドンドンと街の様相は変わっていくものである。3、40分も歩くと秋葉原に着いた。特に駅周辺の開発が著しく、昔日の雑然とした景観はない。つくば方面へのターミナル駅でもあり、すっかりそれらしい佇まいに変わっていた。

 平日なのに歩道には人が溢れている。信号が変わるとドッと多くの人々がわたる。とある一つの店に、入ってみた。アキバは海外でも著名な電気街である。そのせいか、日本人以外の店員が見られるのが面白い。一見して東南アジアやインド系の人がいる。また、中国人や台湾などの客を意識して、(ファンイ=通訳)などと腕章をつけた店員もいる。中国人にとって、自国語の分かる店員は頼りになる存在で大いに助かる。もちろん、この店員は中国からの留学生であった。

 この秋葉原で目立つのは、言わずと知れた麻生太郎首相である。道路沿いの建物の壁や、店の入り口、ガラス窓などにマンガチックな似顔絵が見受けられる。エリート然とした、冷たい印象の安倍・福田の元総理よりは親しみやすいのかも知れぬが、今や大好きなマンガも読めない日々を過ごしているらしい。マンガも最近は馬鹿にできぬ読み物と認識されているが、それが総理の人気の大きな部分では情けない。
 しかしこの街に集う若い人々も、選挙では大きな一票である。麻生総理をはじめ、小沢民主党代表も、福島社民党党首なども、インターネットの「ニコニコ動画」なるものに登場して自党のPRや党首のイメージアップに懸命だ。

 組閣から一気に解散へと突っ走りたかった新内閣。選挙管理内閣と揶揄された内閣も、麻生新総理の思わぬ支持率低迷で解散に踏み切れなかった。モタモタとしていたら、米国発のサブプライムローンなるものが押し寄せてきた。そして低下気味だった景気は一気に泥沼化した。
 ドル安円高は猛烈な勢いで加速し、輸出比率の高い日本企業は今最悪の事態にある。米国景気の低下で、最大の販売先を失い、大幅な売り上げ減に陥ったままである。

 近々の報道によれば、米国の10月度自動車販売台数は約25年ぶりの低水準だ。日本国内の販売台数も、10月は調査が始まった1968年の10月以来過去2番目の低さ。バブル期の半分以下、40年ぶりの低水準とか。
 自動車不況は国内メーカーの生産工場を直撃し、派遣従業員の契約解除や期間工の解雇を引き起こしている。くるま城下町といわれる日産の栃木工場は、夏以降毎月生産計画を下方修正を続ける状況に追い込まれている。



    

         

 一方、最大手のトヨタ九州も今年8月、13か月ぶりの前年割れを記録。福岡県内にある部品メーカーはトヨタからの発注が半減したという。自動車産業はすそ野が広いだけに、大規模な減産は下請けや孫下請け、そのまた下請けにまで大きな打撃を与える。
 鉄鋼大手も化学も製紙も、すべて軒並み業績の悪化に歯止めがかからない。雇用範囲の広さでは自動車に匹敵する住宅産業もまた、過去の最低水準を彷徨っている。新築マンションが売れない。中には、1,000万円も値引き販売される事例も出ている。

 築後30年を経過した我らがマンションに、最近、子どもの声が聞こえるようになった。これも高値のマンションに手の届かない若い人たちの生活防衛の一環だろう。日本経済の悪化を示すのに、身近な手本がある。百貨店大手が店舗の縮小を決めている。老舗の三越とても例外ではない。より庶民に近いスーパーマーケットも、また同様だ。

 巨大な店舗を全国各地に展開し、一人勝ちを決め込んできたイオンも、遂に不採算店舗の撤退に踏み切った。いつまでも拡大基調の続かないのは、他の業種と同じだ。ここにきてスーパーの安売り店の増設が始まった。
 かつてダイエー傘下であった、「24時間営業のビッグA」の業績は好調である。それはそうだ。著名なブランド食品を、他のスーパーよりも安く売るならば人々はそこに集まる。こんな単純な理由で、イオンに続く大手スーパーやコンビニも安売り店に進出し始めた。

 当地におけるスーパー既存店間の価格競争も激烈である。物価の優等生であった鶏卵は、お客を吸引する代表的な目玉商品であった。通常10個200円程度のものを、88円とか98円でチラシに載せる。これが最近は128円へと変わった。コストアップを吸収できないものと思われる。
 毎日のように新聞に折り込まれるチラシには、「特別ご奉仕」「大感謝セール」「感謝企画」「日替わり超特価」「家計応援」「緊急円高還元」「日替わり市」「生活応援」「大収穫祭」「半額商品ズラリ」「ポイント5倍サービス」などと、枚挙にいとまがない。

 数々の食品不祥事で、消費者の見る目も厳しくなり賢くなった。見せかけの価格を下げて容量を減らしたりする商品も、偽りの商品を見破る目も肥えてきた。お年寄りを欺く偽装特売の店は、必ず大きなしっぺ返しを食らうことを知るべきと思う。大豆の90パーセントを輸入する日本が国産100パーセントの納豆をそんなに多く供給できるわけもない。それで「国産」の表示も減ってきた。
 いっとき「国産大豆」をうたった納豆がめっきり減ったのは、メーカーとして賢明な選択である。

 
        
      

  米国発の金融危機                

 
米国で起きた金融危機の影響は、あっという間に世界中に飛び火した。日本の株価も急落!なけなしのわが家の株も、限りなくゼロになってしまった。おっちゃんは株はもちろん、競輪・競馬・宝くじなどに全く無縁だったが、おばあさんがマネーゲームに熱中した時期があった。バブルの時期を経験し痛い目に遭ったにも拘わらず、その先例は生かされなかった。おばあさんは、昔からお金に固執する人種と言えるのかも知れない。マネーゲームに夢中にならずにタンス預金しておけばよかったわけである。

 サブプライムローンも米国の「カジノ資本主義」の手法が原因と言われている。大手金融機関や、ヘッジフアウンドと呼ばれる投資目的の投資組合が証券市場や原油・商品市場にジャブジャブとお金をつぎこんだ。動かした資金の規模は、実際の生産活動の指針である各国の国内総生産(GDP)すべてを合わせた額の4倍に達していた。サブプライムローンは、米国で投機の対象とされていた「低所得者向けの高金利住宅ローン」であった。返済能力のない人にもどんどん貸し出し、その債権を誰でも売買できる証券に変えて世界中に売りさばいた。そんな手法が破綻した。いわは、こんな「ばくち金融」に失敗したのが証券大手のリーマン・ブラザーズということになる。

 マネーゲームにうつつを抜かした結末は、日本や世界中の労働者、コツコツと働く人々の生活の基盤を失なわせ、路頭に迷わせる。そして100年に一度と言われる恐慌を招くことなる。欲望の増幅が幸せな世の中をもたらすことは無い。我々は、ほどほどの生活を楽しむべきではなかろうか。                                                                                      
                                       
(C・W)
 
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