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**** 最近の世相に思う ****


 最近、新聞やテレビなどのマスメディアの報じるところによると、どうやら景気は回復基調にあるように見受けられる。

 日銀の福井俊彦総裁は、「景気は緩やかな回復を続けており、国内需要も底堅さを増している。先行きも当面緩やかな回復を続ける中で、前向きの循環が強まっていく」と述べ、経済情勢が改善しているとの見方を示した。


 十一地区の報告では、神戸支店が、輸出の好調や設備投資の回復基調に加え、個人消費に底堅さがうかがわれるとして、基調判断をこれまでの「緩やかな回復」から「回復」と上方修正。大阪支店も「全体として回復している」とするなど、景気の総括判断に何らかの形で「回復」という表現を盛り込むケースが増えたが、北海道地区は「最終需要面を中心にやや弱めの動きが続いており、企業の景況感にも改善は見られていない」と景気判断を据え置いた。

 北海道・札幌市で自営業を営む私の友人がいる。上京する時などには、いつも都合のつく者たちが集まり同期会が開かれる。その際には、どうしても「北海道の景気はどうか」などといった話題が出てくる。彼は言う。「北海道には有力な地場産業がないから、景気が悪くなるときは一番先だし、景気が回復するのも一番最後なんだよ」と。我々の集まりでは決して弱みは見せないが、実態はかなり厳しく深刻であることを、参加する皆はわかっている。

 大半の仲間たちが既に現役を退いた今でも、「自分は経営者として事業を止めるわけにはいかない。従業員を見捨てるわけにはいかないのだ」と、いまだに事業継続の意欲は充分である。普通のサラリーマンたちは、いかに能力があったとしても「定年」という名の元に強制的に引退を強いられる。だが中小企業の運営を任せられているオーナーには、定年がないのである。何としても事業を続けていかねばならない宿命を負っている。一方、大企業の経営者たちは一様に、一端の経営理論をぶっているが、実態は自社の経営にそんなに責任を負っているわけでもないようだ。
 ごくごく単純にとらえれば、コツコツと仕事を勤めあげた末に、たまたま運良くトップに上り詰めたに過ぎないのだ。だから自分の地位の保全が何よりで従業員のリストラや解雇にも、それほどの感情も持たないし、未練もないように思われて仕方がない。大企業に君臨している(ように見える)彼らも、所詮は一介の高給取りのサラリーマンと考えて大筋で間違いないだろうと思う。
 
 情けないことに、ここ数年ズーッと大企業の不祥事が続いている。超優良企業として学生たちの憧れの的だった雪印乳業も輸入牛肉偽装で消えてしまった。最近では六本木ヒルズの回転トビラでの死亡事故における過去の事故隠しや、三菱自動車の脱輪事故隠しなど目を覆いたくなるものばかりだ。彼ら経営者たちは事態を把握しながらも、数年も前から起きていた事故を監督官庁に届けることもなく放置していた。人命に繋がる事故も、偽りの報告で済ませ改善もせずにいたのだから、あきれて物もいえない。これらはいずれも、経営者が自己保身に走ったことに起因する。
 三菱自動車も販売不振に加え、再建へ向けて唯一の拠りどころだったダイムラーにも見放され、倒産すら懸念される事態に陥ってしまった。如何に大企業と言えども消費者をあざむけば、そのツケは確実にまわってくることを、今しみじみと味わっているに違いない。

 確かに、「景気は回復しつつある」のかも知れない。デパートでは、30万円もする高級紳士服が売れ始めたといわれる。だが、これはマユツバものである。マスコミに誘導されてはいけない。そんな人がたくさんいるわけではない。
 また、「新三種の神器」といわれるデジタルカメラ、DVD録画再生機、薄型テレビなどの家電商品が好調で消費を牽引しているとのことである。これは、ある程度は信憑性があるようだ。でも薄型テレビはどうなんだろう? そしてDVDは? 一般家庭では、つい数年前に平面テレビに置き換わったばかりである。テレビを使用する期間は比較的に長い。薄型テレビは高嶺の花であった。それが急速に売れているとは思えない。DVDも含めて成長商品であることは認めるところだが。

 デジカメに関しては、問題なく快調に売れているとみてよい。印画紙とインク代などを勘案するとコスト面で従来のフィルムカメラと大差ないようだが、何時でも何回でも写して消せる利便性は、完全にフィルムカメラを抜いたと思われる。
心配なのはDPE店だが、その殆どは本業のかたわら取り次ぎをやっていたに過ぎないから、大きな影響を受けることはないだろう。デジカメ全盛時代を迎えた背景には、パソコンの普及が見逃せないところだ。機軸となる商品(パソコン)が売れると、その周辺機器や付帯する商品も販売を伸ばす典型的好事例である。
 
 大企業の業績回復がささやかれる一方で、中小企業は長期間にわたるデフレで疲弊している。一般家庭も同様である。物事は悲観的に考えるよりも、楽観的であるほうが良い結果を生み出すことが多い。ただの能天気では困るが、着実に前を見据えて事業の再構築を進めることが要望されるところだ。
 暗いニュースばかりの世の中に見えた一筋の灯り、「景気回復の兆し」が確かなものになることを望んでいる。(C.W)