上海紀行
Part 18

ライター:千遥

  魯迅から夜の南京東路へ

 魯迅文学探訪のあとは夜の南京東路の探検を楽しむ必要がある、と勝手に結論づけた。南京東路は歩行者天国で、年間をとおして車は通行禁止になっている最も人出の多い通りでもある。

 上海随一の観光スポット・外灘に隣接しているから、そこから流れてくる人も多い。正月の様子はどうだったか。夜の南京東路はネオンが眩しい。我々には、やはりケバケバしい感じがする。

 少し離れた近隣は旧租界街でもあるから、西欧風の建物が連なっている。が、ビジネス街でもあるから、夜は静かなもので、それほどの賑わいはない。


老客も新客も皆賓客だ

どこへ行くにも同じような服装の私は、ここ繁華街の南京路を歩く時も何ら変わることはない。日本にいるときと同じようなラフな恰好だ。

朋友はガールフレンドへのお土産を買いたいからと、デパートに行くことにした。当方はそのような用事もないし、かしこまったところよりは泥臭い町並みの方が好きだから、同伴しないことにする。

2時間後にマクドナルドの店頭で落ち合うことにして、お互いに単独行動を楽しむことにした。私は是非とも行きたかった外国語書店を訪ねることにした。同学の女朋友から聞いていた場所にたどり着いたが、5時で閉店の看板がありシャッターは既におりている。ウーン失敗したか。それならば、とCDを買いにいくことにした。



人影もまばらな
旧日本租界街

 戻る場所を確認した上で繁華街からはずれ、ちょっと裏道を回っていくと、CDを販売している店がひとつあった。圧倒的に多いのは最近流行している中国的歌だけれど、美国(米国)の歌やドラマもののVCDが店頭にたくさん並んでいる。

 私の欲しいものは中国語の発声で、かつ中文(中国語)の字幕つきだけど、そんなものは無い。ここは日本ではないのだからなあ。店内を、いかにも日本人らしい人物がウロウロしていると、販売員が気になるらしく寄ってきて説明を加える。

 日本人に馴染みのテレサ・テン(deng li jun=トン・リージュン)のCDで高値のものをを奨める。でも、当方はなかなか買う気配を見せない。とにかく偽物が多い中国だから簡単には買わないのだ。でも、結局はどれが本物で、どれが偽物か分らないから、あとは自分の決断力に頼るしかなかった。


コカコーラも、ペプシもある

 どうしてもテレサ・テンに目が行く。まず4枚組のしっかりした包装のCDを買う。60元だから1枚が15元か。もう一つ欲しかったがやめた。こんな時に、けっこうケチくさい自分に気づく。

 店内で流されている歌手のものが現在流行しているとのことなので、購入することにした。更にDVDを買う。中国と米国のドラマ物だ。

 中国で最も一般的なのはVCD(ビデオコンパクトディスク)である。欧米や日本の評判の作品は、大体偽のVCDに化けて(コピーされて)安売りされている。これはどこでも一枚10元。面白いのは、大ヒットした日本の「千と千尋の神隠し」があったことだ。


日本居酒屋は高級店になる

 日本でもまだ売られてはいないはずなのに。それにドラエモンや一休さんなどの童話ものもある。やはり私もどこか間抜けているためか、CDと間違えてVCDを買ってしまったものもある。

 VCDならば、いろいろな種類があって欲望にはキリが無い。概ね買い揃えて南京路に戻る。やはり正月だ。バーン、バーンとけたたましい音がする。若者たちが爆竹を鳴らして騒いでいるのだ。

 歩行者天国には、観光用の電車が500メートル位の距離を往復している。大半は地方から出てきたお登りさんの人たちだ。お祭り騒ぎ、お正月とあって大人もニコニコとして乗っている。それを知り合いがカメラにおさめる。

 街頭では物売りが多い。同じ品物をたくさんの人たちが売っている。高いものではないが、まず買う気持ちはおきない。品物が安っぽいのである。

 ブラブラと歩いていったら、突然一人の女性に声をかけられた。飯を食べに行こう、と言っているようだ。よくよく聞くと何てことはない。財布を盗まれてしまった。それで飯が食べられないから、ご馳走してくれと言っているのだ。バッグの中を開けて見せる。そんなもの最初から何も入っているわけは無い。

 当方も暇つぶしに、その話にのることにした。どこで食べるか、と聞くとマクドナルドが良いという。それなら安い。どう転んでも失敗はあるまい、と店内に入った。注文は先方にまかせた。店で食べていると、また次の要求がでてきた。さすがに中国人は商売上手である。さて、どうしたものか悩ましいことになってきた。(続く)


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